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この世界へ来て、早3ヶ月。
俺はなんとなく、馴染んでいた。
今は、あの時と同じ。夕暮れに包まれていた。
優しく鳴る風の音に、幼稚な声が重なる。
「ガンちゃ~ん。何してんの~?ぼーっとしちゃって~。」
「ん。なんでもない。」
ベランダであぐらをかいて座り、夕暮れの空を眺めている俺に、
俺のーーーーガールフレンド。
ネガ・シーナことシーナが、
さっき食った夕食の皿を拭きながら話しかける。
シーナ。
目はぱっちり、髪はさきの方が少しウェーブがかった金髪。細身で華奢。
そして、ーーーー小さい。
俺の身長は170㎝とごくごく標準だが、シーナはおそらく140くらいしかない。
この身長で、俺と歳が変わらないとはーー。
俺が返事を返すと、
ぶーっと頬を膨らませ、そそくさと任務に戻る。
戦闘服はーーエプロンだ。
そして。
シーナの能力。
家事をするにはうってつけ。
最初は驚いたが、目が慣れた。
シーナの能力。それはーーー。
足がとんでもなく速いのだ!
電光石火の如く家事をこなしてゆく。
皿を拭き終わり、それを片付けたと俺が認識した頃には
すでに廊下の雑巾掛けをしている。
それもとてつもないスピードで。
そんな日常的な風を背に受けながら、俺は物思いにふける。
この世界。
3ヶ月前、学校から突然大空へワープし、しばらく絶叫したのち顔面強打。
かなり痛かったがなぜか怪我すらしなかった。
強打した顔面をさすった後、目の前に広がった光景に、驚きと…
なぜか安堵を覚えた。
この世界。
シーナから教えてもらったこの世界の名は、「理想郷(アガルタ)」。
俺から言わせれば…ファンタジー世界そのものだった。
初めてこの世界を見たとき、そう思った。
当たり前のように妖精やドラゴンが大空を飛び、街が宙に浮いていた。
「なんだ…ここ。」
と、ごくごく一般的な言葉を口にした事と…
何故だかは分からないが、
安堵を覚えたのを…覚えている。
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