第1章

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「元の世界だと…?」 「そう。この世界、アガルタは絶望の極地を味わった人間が行き着く聖地。言わば、理想郷。」 …理想郷。 なぜ…? 絶望を味わい尽くした人間に、 そもそも希望などない。 そんな奴らが行き着く理想郷だと? いったい…。 「アガルタでは、元の世界で叶わなかった事が叶う…。こう言ったら納得する?」 …元の世界で叶わなかった事だと? つまり…。 「そう。彼女がその一つさ。 …元の世界で君は彼女が欲しいと望んでいた。」 全てを見透かすような目で、俺を見てくる神。 そこには、嘘偽りではないという意味も込められていた。 「君がもとの世界で望んだこと…。それが自然と叶っていく世界さ。 だから…理想郷(アガルタ)なのさ。」 俺の頭は…また乱れた。 俺がもとの世界で望んだ事が、 自然と叶ってゆく世界。 …望んだこと。 あの笑顔。 あの温もり。 笑いあった日々。 記憶の旅が終わった時、 俺の気持ちは、自然と前を向いていた。 俺の顔が、よほどいい顔に見えたのだろう。 神が微笑んでいた。 そして一言…。 「いいとこだな、ここ。」
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