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「元の世界だと…?」
「そう。この世界、アガルタは絶望の極地を味わった人間が行き着く聖地。言わば、理想郷。」
…理想郷。
なぜ…?
絶望を味わい尽くした人間に、
そもそも希望などない。
そんな奴らが行き着く理想郷だと?
いったい…。
「アガルタでは、元の世界で叶わなかった事が叶う…。こう言ったら納得する?」
…元の世界で叶わなかった事だと?
つまり…。
「そう。彼女がその一つさ。
…元の世界で君は彼女が欲しいと望んでいた。」
全てを見透かすような目で、俺を見てくる神。
そこには、嘘偽りではないという意味も込められていた。
「君がもとの世界で望んだこと…。それが自然と叶っていく世界さ。
だから…理想郷(アガルタ)なのさ。」
俺の頭は…また乱れた。
俺がもとの世界で望んだ事が、
自然と叶ってゆく世界。
…望んだこと。
あの笑顔。
あの温もり。
笑いあった日々。
記憶の旅が終わった時、
俺の気持ちは、自然と前を向いていた。
俺の顔が、よほどいい顔に見えたのだろう。
神が微笑んでいた。
そして一言…。
「いいとこだな、ここ。」
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