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「あらあら泣かせちゃったわね」
七美の母親がゆつきの前にコーヒーを置いてくれる。
「すみません」
ゆつきはまた謝った。
ずっと七美の両親に対して、後ろめたさがあったのだ。
普通自分の娘が同性愛者だなんて、親として認めたくないものだと思う。
なのに七美のご両親は、それを認めたうえで、ワタシによろしくお願いしますなんて頭を下げたのだ。
「謝らないで、それよりねぇゆつきさん」
「はい」
「毎日毎日アナタのことを楽しそうに話す七美のことが、母親としてとても嬉しくて、どうしてもアナタに会いたかったんだけど、実際に会ってみてアタシもアナタのことがすごく気に入っちゃったわ」
「有り難うございます」
「これからは頻繁にうちに遊びに来てね」
「はい。本当に有難うございます」
ずっとずっと七美の両親に対して、負い目を感じていたゆつきにとって、二人からかけられた言葉は、過去の誰からの言葉よりも嬉しい言葉だった。
これからはずっと、負い目を感じることなく、堂々と七美と生きていくことが出来るのだ。
「ほら冷めちゃうから飲んで。はい、お砂糖とミルク」
「はい。有難うございます」
ゆつきは涙を拭ってから、砂糖とミルクを入れてスプーンでかき混ぜた。
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