56人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「だからねゆつきさん」
「はい」
「ゆつきさんが七美の恋人としてお付き合いしてくれているのかなぁと、気になっていたんです」
「はぁ……」
「今日の七美のアナタに対する態度を見ていて、やはり七美はアナタに惚れているんだなと思いました。アナタもそうなんですか?」
「はい。すみません」
「いや、だから、なぜ謝るのです?」
「それは……女の子同士だと結婚も出来ませんし、そうなるとお孫さんの顔も見せてあげられないし」
「あはは。そんなこと気にしてませんよ。七美には年の離れた兄がいましてね。すでに僕は二人の孫のお祖父ちゃんです。ですから、七美にはそんなことは期待していません。それよりもただ、あの子が幸せになってくれさえすればいいんです」
優しく微笑む七美の父。
「中学生の頃のトラウマなのか、中々友達が出来なかったみたいだった七美が、今は本当に毎日楽しそうでねぇ、僕たちもそれが嬉しくてたまらないんですよ」
「そうですか」
「不束な娘ですけど、これからもずっと仲良くしてやってくださいね」
「はい」
七美の父親がそう言って頭を下げたとき、ゆつきの目からポロポロと大粒の涙が零れた。
最初のコメントを投稿しよう!