第3話 七美との出会い

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「正月休みにさぁ、一緒に旅行にでもいかないか?」 「え?」 七美が涙を拭う。 「ゆつきさんはどう?」 「あ、ぜひ」 「そっか。じゃあどこか近場でさぁ……」 「でもお父さん。今からでホテルがとれるかしら?」 七美の母が笑顔で口をはさんだ。 「そうだなぁ~。とりあえずある程度の場所を決めてさぁ、電話かけまくってみよう」 お父さんも微笑む。 まさか認めてもらえるなんて思っていなかったから、ワタシは本当に幸せ者だと思った。 「ねぇパパ、私どうせならハワイがいい」 涙を拭った七美が、一転笑顔で提案する。 「おいおい。それじゃあパスポートを取りに行かなきゃならないだろ。今回は近場でいいじゃないか」 「まぁ、しょうがない。お金を出してくれるんなら、文句は言わないよ」 「そりゃ、オマエらには金は出させないけど」 「やった。じゃあやっぱり海外が良い」 「アホか!」 「え~~~ケチ。ゆつちゃんも海外が良いよね?」 「ううん。私は近場の方が良いかな」 「ほらみろ。三対一で近場で決定だからな」 「え~~~。ゆつちゃんの裏切り者~~~」 七美は子供みたいに口を尖らせた。
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