おはぎ友好作戦

3/41
前へ
/708ページ
次へ
 しかしカスは、はっきり言い切った側から言い澱む。  自分で言ったはずのその台詞が、自分の中でまだ処理し切れていないのか、「あー……」と間を繋ぎつつどう説明したものかと考える。  そしてそれは質問と言う形で、逆にこちらへと向けられた。 「というかお前……ほんと何やったんだ?」  いや僕に聞かれても……。  狙って起こした行動じゃないし。なんかいろいろやっている間に、気が付いたらそれが普通になっていただけで。……なるほど世間知らずはこうやって作られていくんだな。見聞を広げないと自分の輪郭は見えないのだ。  まさか『あれ』らが、そんなに特異なことだったとは。  カスは腕を組むと、悩ましげに天を仰ぐ。  そして考えがまとまったのか、告げる。 「NPCは、勝手に俺らを助けたりはしねえ」  それは以前、森でも聞いた話であった。  山村の老村長が援護に来てくれた、森での戦闘。  その時にカスは、驚きと共にその台詞を口にしていた。 「NPCが行動をするのは、あくまでこちらからアクションを起こしてからだ。話しかけたり、特定のアイテムを持っていたり、何らかの要因あってそこでクエストは発生する。クエストがなけりゃ、ほとんどのNPCはプレイヤーには干渉しねえし、まして戦闘中に助けに入るなんてことはあり得ねえ」  ということらしい。  これまで何十と戦闘をこなしてきただろうカスが言うのだ。  間違いない。 「けどお前にはそれがあった」  そうなのである。  しかもそれを僕は何度か見ている。  例えば、台風が来た時には、僕が畑に居なかった間、農村の女村長が畑の面倒を見てくれていた。なんてこともあった。 「それで、この話の一番のネックは、あいつらが見返りを求めねえっつーところだ。大抵のクエストでは、物々交換であったり、頼まれた依頼であったりを達成しねえと、話が進まねえ。にもかかわらず、お前のそれは、無償だ。何も要求がねえ」  無償。  NPCが金銭やアイテムを要求しない。  それどころか事後。  仮に要求があったところで、こちらが報いるいわれはない。  まったくの慈善。  それがクエストと。  僕がNPCから受けた厚意との。  明確な差異である。 「似たような事例はいくつかあったらしくてな。その原因についてだが、『友好度』ってのが関係してんじゃねえかって話だ」
/708ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15356人が本棚に入れています
本棚に追加