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しかしカスは、はっきり言い切った側から言い澱む。
自分で言ったはずのその台詞が、自分の中でまだ処理し切れていないのか、「あー……」と間を繋ぎつつどう説明したものかと考える。
そしてそれは質問と言う形で、逆にこちらへと向けられた。
「というかお前……ほんと何やったんだ?」
いや僕に聞かれても……。
狙って起こした行動じゃないし。なんかいろいろやっている間に、気が付いたらそれが普通になっていただけで。……なるほど世間知らずはこうやって作られていくんだな。見聞を広げないと自分の輪郭は見えないのだ。
まさか『あれ』らが、そんなに特異なことだったとは。
カスは腕を組むと、悩ましげに天を仰ぐ。
そして考えがまとまったのか、告げる。
「NPCは、勝手に俺らを助けたりはしねえ」
それは以前、森でも聞いた話であった。
山村の老村長が援護に来てくれた、森での戦闘。
その時にカスは、驚きと共にその台詞を口にしていた。
「NPCが行動をするのは、あくまでこちらからアクションを起こしてからだ。話しかけたり、特定のアイテムを持っていたり、何らかの要因あってそこでクエストは発生する。クエストがなけりゃ、ほとんどのNPCはプレイヤーには干渉しねえし、まして戦闘中に助けに入るなんてことはあり得ねえ」
ということらしい。
これまで何十と戦闘をこなしてきただろうカスが言うのだ。
間違いない。
「けどお前にはそれがあった」
そうなのである。
しかもそれを僕は何度か見ている。
例えば、台風が来た時には、僕が畑に居なかった間、農村の女村長が畑の面倒を見てくれていた。なんてこともあった。
「それで、この話の一番のネックは、あいつらが見返りを求めねえっつーところだ。大抵のクエストでは、物々交換であったり、頼まれた依頼であったりを達成しねえと、話が進まねえ。にもかかわらず、お前のそれは、無償だ。何も要求がねえ」
無償。
NPCが金銭やアイテムを要求しない。
それどころか事後。
仮に要求があったところで、こちらが報いるいわれはない。
まったくの慈善。
それがクエストと。
僕がNPCから受けた厚意との。
明確な差異である。
「似たような事例はいくつかあったらしくてな。その原因についてだが、『友好度』ってのが関係してんじゃねえかって話だ」
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