15356人が本棚に入れています
本棚に追加
ちなみに僕のアバターネームは『カジ』。
ただ苗字をカタカナにしただけで面白味もあったものじゃないが、まあ呼ばれ慣れてない名前にすると、いざという時困るかもしれないしね。
グフオの最大の魅力。
それは自由度の高さである。
ただし洋ゲーのそれのように、自由に動き回れる、自由に物語を進められる、というのともまた違う。
ストーリーすらがなく、あらゆる進め方が自由なのである。
ある程度、世界観を知るため程度のストーリー、幾つかのクエストこそあるものの、メインクエストと呼ばれる、RPGの本分は存在しない。
どう遊ぶかが、純粋にプレイヤーの手に委ねられている。
このゲームのキャッチコピーはこうだ。
『探せ』。
すなわち全てを自分の手で解決しろということだ。
用意されたレールを進み、簡単にレベルが上がっていく従来のゲームとは一線を画し、何も与えられないゲーム。
何をするのが正解なのかまったくわからない。
その代わりに、すべては思うが儘。
正解がないゲーム。
あるいは全てが正解であるゲーム。
自分自身という名のロールプレイングゲーム。
それがこのグフオの魅力の一つなのだろう。
「さて」
現在サービス開始から大体30分。
さっきちょろっとwikiを確認してみたが、雑多な情報ばかりでまだ充実していない。
これでは何をしていいものか、行動方針を決めることはできそうもないな。
「まずは適当にやってみるか」
なんでもできる。
それはすなわち、自由に戦えるだけがこのゲームすべてではないということだ。
僕は正直RPGなんてどうでもいい。
ゆえに、戦って勝つこともどうでもいい。
ただ僕は夢を叶えに来たのだ。
僕は、この場所、このVRMMORPGの世界で『農業』を始める!
誰にも邪魔されず。
誰にも文句を言わせず。
存分に農業をするためだけに、僕はここへ来た。
僕の歩みはそのためだけに進む。
「ははは、しかし何していいかわかんねえ」
フィールド広すぎ。
眩しいくらいに空が青いなこんちくしょう。
立ち止まっていても始まらない。
とりあえず僕は、一歩、踏みだした。
ただ一心に、前へと向かって突き進む。
最初のコメントを投稿しよう!