VRMMO、はじまったな

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 ちなみに僕のアバターネームは『カジ』。  ただ苗字をカタカナにしただけで面白味もあったものじゃないが、まあ呼ばれ慣れてない名前にすると、いざという時困るかもしれないしね。  グフオの最大の魅力。  それは自由度の高さである。  ただし洋ゲーのそれのように、自由に動き回れる、自由に物語を進められる、というのともまた違う。  ストーリーすらがなく、あらゆる進め方が自由なのである。  ある程度、世界観を知るため程度のストーリー、幾つかのクエストこそあるものの、メインクエストと呼ばれる、RPGの本分は存在しない。  どう遊ぶかが、純粋にプレイヤーの手に委ねられている。  このゲームのキャッチコピーはこうだ。  『探せ』。  すなわち全てを自分の手で解決しろということだ。  用意されたレールを進み、簡単にレベルが上がっていく従来のゲームとは一線を画し、何も与えられないゲーム。  何をするのが正解なのかまったくわからない。  その代わりに、すべては思うが儘。  正解がないゲーム。  あるいは全てが正解であるゲーム。  自分自身という名のロールプレイングゲーム。  それがこのグフオの魅力の一つなのだろう。 「さて」  現在サービス開始から大体30分。  さっきちょろっとwikiを確認してみたが、雑多な情報ばかりでまだ充実していない。  これでは何をしていいものか、行動方針を決めることはできそうもないな。 「まずは適当にやってみるか」  なんでもできる。  それはすなわち、自由に戦えるだけがこのゲームすべてではないということだ。  僕は正直RPGなんてどうでもいい。  ゆえに、戦って勝つこともどうでもいい。  ただ僕は夢を叶えに来たのだ。  僕は、この場所、このVRMMORPGの世界で『農業』を始める!  誰にも邪魔されず。  誰にも文句を言わせず。  存分に農業をするためだけに、僕はここへ来た。  僕の歩みはそのためだけに進む。 「ははは、しかし何していいかわかんねえ」  フィールド広すぎ。  眩しいくらいに空が青いなこんちくしょう。  立ち止まっていても始まらない。  とりあえず僕は、一歩、踏みだした。  ただ一心に、前へと向かって突き進む。
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