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「にしても、あたしら全員こんないいもの貰っちまったら、器具程度じゃ、あんた割に合わないんじゃないかい?」
集落に住んでいる人数は数十人はいるはずだ。もっと海側に住んでいる集落のことも考えれば倍近い。
もしそのすべてに行き届くよう腐葉土を用意するとなると、十や二十では追いつかないほどの量になるだろう。
けれど。
それに見合うだけの報酬は貰っていくから大丈夫だ。
「では、アブラナを自由にとってもいい権利、なんてのは」
目的の一つ。
圧搾機を手に入れることの他に、採取の権利を貰うことであった。
どう頼もうかと思っていたが、あちらから話を進めてくれるとは願ったり叶ったりだ。
「ちなみに村長さんは」
「あたしが村長だよ」
ふくよかな農夫の女性、改め村長である。
なるほど村長ならば多くの事を見聞きするだろうから、他の集落の情報や、僕の情報を知っていてもおかしくはないな。
そんなんでいいのかい。
と村長はばつの悪そうな顔をする。
彼らにとってはあの花はそれほどの価値はないということらしい。
「あの辺りは、先々代のあたりから集落に土地が与えられてるんだが、人手が足りなくてずっと野ざらしにしてたんだ。別に誰が育ててるってえわけでもない、好きに使いな」
「ありがとうございます」
断りを入れなくても、彼らのアブラナに対する執着のなさからすれば、きっと勝手に取っても問題はなかっただろうけれど、こういうのは誠意の問題だからね。あとから何か文句を言われても、話を通しておかなかったこちらに非があるのは明白だ。
ゲームの中といえど、折り目正しく。
カジは自由にアブラナ採取が可能になった!
「ああそうだ、ちょっと待ってな」
そう言うと村長はどこかへと歩いて行って、しばらくして手に二つの圧搾機を持って帰ってきた。
「他のとこからも使ってないやつ何個か持ってきてみたんだが、よかったらこれも使いな」
カジは『圧搾機』を合計で三つ手に入れた!
なんて良いNPCなんだ村長。
僕はこれからも彼女についていこう。
「油ができたら報告に来ます」
「ああ楽しみにしてるよ」
そうして僕は村長と別れ、帰路へとついた。
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