おはぎ友好作戦

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 僕がこのグロウファンタジーオンラインを始めてから、長いようで短い8日間が過ぎたわけだけれど。ゲームとしてどのくらい進んだかと言われれば、悩ましいところである。  確かに、行った野菜作りは、ヒカリポポムを加えて、品数を10個と数を伸ばした。畑の状態だって当初とは比べ物にならない。運とスキルに恵まれたとはいえ、一時でも最高の状態を作り上げられたのも、ひとえに土壌改善の下支えあってのことだ。もはや農村のそれと遜色ない程度には、改善されたとみていいだろう。  油も作った。  バイオエタノールも作った。  商売もして資金も集まったし。  新たなる栽培、もち米を育てるための準備もそろった。  だが、そのどれもがやはり、農夫としての域を出ていない。  いや別に農夫以外の職をするつもりなどないし、戦闘だ装備探しだと、ゲーム的なお遊びをする予定も、現在考えてはいない。  とはいえ、この世界がゲーム内であるという事実は揺るがない。  ゲームであれば、ゲーム的なイベントも当然あるだろうし、ゲーム的な報酬も当然にある。その報酬が、今後の農業生活に大きな貢献をしてくれることだって十分にある話。となれば、その機会をみすみす見逃すなんてのは、楽に苦労するのが主題であるゲームに於いて、本末転倒と言わざるを得ない。 「あっはっはっは! そうか! やっと本腰を入れてゲームをする気になったか! おせえんだよ! けど、ようこそグロファンの世界へ! まあ俺が作ったわけじゃねえけどな」  僕の目の前で、僕がした話を笑い飛ばす男。  重厚な鎧をまとったその男は、見た目の硬さとは違って、やはり中身は軽薄な調子である。  KINGカス。  ギルド『卍堂』を統括するギルドマスターでもあるこの男は、中々にゲームを、ゲームとして楽しんでいる側の人間で、それゆえ僕にはない情報を沢山持っていて、そういう話に関係しては頼りになる人物だ。中身はあれだけれど。 「まあしかし、お前の『それ』は、俺らにはない良い武器になると思うぜ」  とカス。  ゲーム内での僕の本拠地。  森の中に佇むロッジ風の家。  その一階ベランダで僕らは対面して座り、談笑に花を咲かせていた。 「そんなに違うものなの?」 「違うね」  断言する。  そして断定する。 「違うも違ったり、まったくの別物だ」
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