おはぎ友好作戦

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 友好度。  初めて聞く単語だな。  そう言えば、僕が勝手に命名した、『売上力』やら『集客力』やら、商売に関する隠しステータスがあったけれど。どうやらそれに類するもののようだ。 「今はまだ、そのステータスを測る明確な指標ってえのは、見つかってねえけどよ。どうにも、NPCからプレイヤー個々人に対する何らかの数値が存在するんじゃねえか、って話になってるんだわ」  NPCから。  プレイヤーへの。  親しみを表す数値。  友好の度合い。 「っつっても、まだ始まって一週間とちょっとだ。情報の精査も追いついてねえし、真偽のほどがはっきりしてねえんだが――――間違いなくそいつはある。これまでがっつりプレイしてきた俺だ、その辺りのきな臭さについては、前々からちょっとは感づいててな」  僕なんかよりも遥かに多い数、遥かに頻度を増してNPCと接触しているカスだからわかる。いや、カスに限らず、まともにゲームをプレイしている人間ならば、薄々感じてはいたのかもしれない。  友好度か。  そんなものがあったとは。 「お前、NPCの側から話しかけてくるんだろ?」  猫娘から聞いたんだがよ、とカスは言う。  猫娘……ああ、護謨(ごむ)のことか。  そういやあいつ、森ノ市で会った時、そんなこと言ってたな。  あっちから話しかけてくるとかなんとか。 「他のプレイヤーとまともに接触してねえから知らねえんだろうが」  その通りで言い返す言葉もないですはい。  前置きをしてから、カスは教える。 「普通、NPCは話しかけてきたりしねえんだよ」  ……まじ?  なんか普通に会話してた記憶しかないんだけど。 「そ……、そんな、たまたまじゃない?」  運よくそんな場面で出くわしちゃったとか。  まあ、それにしては回数が多いけれど。  というか……。  僕の周りには話しかけてくる人しかいないような……。 「もしかすると、そのターバンの商人ってのも、友好度が高くなったから、そんなに割引してくれたんじゃねーの?」  確かに、ターバンにグラサンをあてがって、大金を渡すことには成功した。けれど、まさかそこが因子になって、友好度が飛躍的に上がった、なんてことがあったりするのだろうか。なるほどあいつなら、金を幾ら与えたかで友好度が変わっても不思議ではない。そう考えれば、急にターバンが僕に親しくしてきたのも頷ける。
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