おはぎ友好作戦

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 つまり。  こういうことだ。 「このまま噂を広めたら、ほぼ無条件にNPCと仲良くなれるってことか」  なんとも素敵な話である。  まあ、広める方法にも、影響の仕方はあるのだろうけれど。  僕が既に保有しているらしい、NPCから僕への友好の度合いを示す、何らかの数値。何の因果か、僕はその数値を、他のプレイヤーよりだいぶ稼いでしまっているらしい。  そしてそれは、噂によって他のNPCにも作用する。  ちょうど昨日僕は、商売を拡充させるために、王都へと足を運び、売り込み宣伝をした。その甲斐あってか、早々に目標額に達する売り上げを出すことに成功している。 「それもまた、友好度が働いたからか」  だからあんなあっさりと、売り上げを出すことが出来た。  そう考えれば、あのスムーズさにも納得がいく。  なるほど。  上手い事つながっていやがるぜ。  これは、間違いなさそうだな。  こうやって噂を広げていくことができたならば。  多くのNPCと友好的な関係を築き、ひいては商売だけでなく農業に於いても、かなりありがたい状況が期待できる。 「もう既に、その友好度のお蔭か、異国の種を簡単に入手することができちゃったしね」  ヒカリポポムの種。  光を放つ、ランタンような実が成る種。  これを僕は、ほとんど関わりのなかった農村民から貰っている。  あれもまた友好度の成せる技とも思える。  あれがなければトカゲたちとも出会えなかったわけだし。  友好度様様である。 「いや……でも、だとしたら、あれだけ取り引きを拒否された理由は何だ?」  昨日僕が売り込みに回った油だが、ことごとく失敗に終わった。なんとか最後の最後に、僕の事を運よく知っていた大姐と話をすることが出来たわけだが、そうでなければ確実にあのミッションは失敗に終わっていた。 「幾らまだ噂が広まっていないにしても、油を売っている宣伝は十分にしていたし、油の存在を知っていた店も何件かあったはずなんだよなあ」  確かに王都での知名度はそこまでではないと思うが。  森ノ市へ来ていた客の大半は、一番身近な王都からの客だ。  怪しい噂ならまだしも、商売の実績を伴った噂だ。ほんの数件でも、僕の噂を知っていてもおかしくないんだけれど。 「まさか……直接僕が売ってないからか」
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