15356人が本棚に入れています
本棚に追加
つまり。
こういうことだ。
「このまま噂を広めたら、ほぼ無条件にNPCと仲良くなれるってことか」
なんとも素敵な話である。
まあ、広める方法にも、影響の仕方はあるのだろうけれど。
僕が既に保有しているらしい、NPCから僕への友好の度合いを示す、何らかの数値。何の因果か、僕はその数値を、他のプレイヤーよりだいぶ稼いでしまっているらしい。
そしてそれは、噂によって他のNPCにも作用する。
ちょうど昨日僕は、商売を拡充させるために、王都へと足を運び、売り込み宣伝をした。その甲斐あってか、早々に目標額に達する売り上げを出すことに成功している。
「それもまた、友好度が働いたからか」
だからあんなあっさりと、売り上げを出すことが出来た。
そう考えれば、あのスムーズさにも納得がいく。
なるほど。
上手い事つながっていやがるぜ。
これは、間違いなさそうだな。
こうやって噂を広げていくことができたならば。
多くのNPCと友好的な関係を築き、ひいては商売だけでなく農業に於いても、かなりありがたい状況が期待できる。
「もう既に、その友好度のお蔭か、異国の種を簡単に入手することができちゃったしね」
ヒカリポポムの種。
光を放つ、ランタンような実が成る種。
これを僕は、ほとんど関わりのなかった農村民から貰っている。
あれもまた友好度の成せる技とも思える。
あれがなければトカゲたちとも出会えなかったわけだし。
友好度様様である。
「いや……でも、だとしたら、あれだけ取り引きを拒否された理由は何だ?」
昨日僕が売り込みに回った油だが、ことごとく失敗に終わった。なんとか最後の最後に、僕の事を運よく知っていた大姐と話をすることが出来たわけだが、そうでなければ確実にあのミッションは失敗に終わっていた。
「幾らまだ噂が広まっていないにしても、油を売っている宣伝は十分にしていたし、油の存在を知っていた店も何件かあったはずなんだよなあ」
確かに王都での知名度はそこまでではないと思うが。
森ノ市へ来ていた客の大半は、一番身近な王都からの客だ。
怪しい噂ならまだしも、商売の実績を伴った噂だ。ほんの数件でも、僕の噂を知っていてもおかしくないんだけれど。
「まさか……直接僕が売ってないからか」
最初のコメントを投稿しよう!