おはぎ友好作戦

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 売り場としての名義はグラサンの店。一応僕が監督をしているとはいえ、そんなことお客からしたらどうだっていいことだ。宣伝の中身にも、わざわざ僕の名前を盛り込むことはしていない。そんなこと売り上げには関係なかったからである。 「じゃあ、一般のNPCが僕の名前を知らないのは当然じゃんね」  大姐が僕の名前を知っていたのは、彼女のほうから情報を集めてくれたからだし。執事さんも左に同じ。彼らのようなキャラが配置されているのは、宣伝が不得意なプレイヤーでも、正当に評価されるようにとの配慮かな。 「まあ……いいか!」  別にそこまで有名になりたいわけではない。  友好度とやらが十分に発動したところで、それを生かしたい目的もないし。今のところ商売は軌道に乗っている。効果的な宣伝ができる土台も作れたし、これ以上を望む必要はないのだ。  それに。  知名度が上がると、NPCを通して情報が漏洩する危険がある。  NPCに情報が拡散されると、彼らを通して、プレイヤーにまで名前が広まる。  以前、森ノ市で僕が僕自身の店で商売をした際、その実績が、炎の料理人なる頓痴気なプレイヤーにまで伝わった。そしてそこから一部、僕の名が不用意に広まってしまった。まあそれで助かった部分もないでもないが。マイナスの方が大きい……。  ゆえにこれ以上名前を売る必要はないだろう。  同じ轍を踏むのは、愚か者のすることだからね。 「……すみません」  どうも。  何度も同じ轍を踏む愚か者です。  で、でももう覚えたよ!  植物なら僕も鑑定ができる。  そのスキルは、ようやっと記憶に定着した。  だいぶ遅いけどね。  なのでせめて、楽しく農業をする時間だけは確保したい。  そのための隠遁生活だ。 「でもなあ、有名になったら新人農夫も増えるのかなあ」  静かな農業と。  新たな仲間達。  両天秤にかける。 「やっぱり……静かに暮らしたいな」  もう既に、変態という変態に目をつけられている。  これ以上の変態は御免被りたい。  そのためにも、静かな時間は大切だ。  だから、宣伝はこのままでいい。  商売の実績は、農村の面々とグラサンにすべてあげよう。  それがどう世情に反映されるかはわからないけれど、彼らも儲けられるし、僕にもそのお零れが入って来る。ならそれでいい。それぐらいのリターンがあれば、裏方仕事に徹するのもよいものだ。
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