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執事のように世話を焼き、林は栞達の目の前から消えた。
傘をさしていたとはいえ、彼も雨に濡れただろうに。
「林さんの分のタオルはあるのでしょうか」
それを聞いた海斗は軽く唇の端を上げた。
「大丈夫。彼なら一番上等のタオルを自分の分にしていることでしょう」
「それならよかった」
「さあ、どうぞ。このままでは本当に風邪を引いてしまいます」
栞は差し出されたタオルを受け取った。
タオルはふわふわとあたたかく空気を含んでいた。
それから海斗はタキシードを脱ぎ、雨で透けたシャツの上から大判のタオルを被った。
胸のボタンを二つ、両手のカフスを一つづつ外し、ブランデーを一口飲む。
ただそれだけのことなのに、なんて魅力的に見えるのだろう。
栞は見惚れるように、それら一連の動作を目で追った。
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