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「桜庭くんっ、桜庭くんっ。聞いた? 聞いた? 転校生のこと! ついに、ついに僕の夢が叶ったんだよっ。こんな完璧な王道学園に来るのは王道転校生しかありえないっ。ていうか違ったら僕が許さないよっ! 明日くる転校生には、僕に萌えと生命力を与える義務があるんだからねっ!」
「あぁ、そう。」
「つめたっ......! その反応、つめたっ。学園一の美人と生徒たちから慕われてる桜庭くんとは思えない返答っ。」
なに、それ。聞いたことないよ。
「ふぁ......。ねむい。」
日に日に暖かくなっていく気候に、未だ隣でピーちくパーちく口を開く、元同室者を無視してあくびを漏らす。
悠め。
俺をあらぬ時間に叩き起こしといて、自分は幸せそうだなぁ。ほんと。
つい先程とはうってかわって寝にくくなった固いベンチの上で小さくため息をつきながら、校舎に掲げられている巨大な時計を確認。
会議は生徒会室で9時から始まるから、あと。
「20分、か。」
「え、なにが。」
「なにって、会議までの時間だよ。今日は悠も出るんだから、ちゃんと真面目にしなよ。」
「はいはいさー。わかってるよ。僕の演技は完璧だもんね。」
「まぁ、うん。それはそうだけど。」
ふざけた調子でそう返してくる悠に、否定できずそのまま頷く。
実際、ほんとに悠の演技は完璧で、俺も寮で同室者になる中等部まで、見事にその演技に騙されていた。
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