第3章 人チガイデス

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ポーンと間抜けな音と共にエレベーターが目的の8階に到着する。 「篠原さんどうぞ?」 開のボタンを押した高原くんが先を促すように振り返る。 なんと、親切な子かの。 感動しながら降りようとして、 「…………」 すぐに何者かに阻まれていると気づいて足を止めた。 握られてる。 ショルダーバッグが、めちゃめちゃがっしりと。 「篠原さん?」 不思議そうな高原くんに、 「ごめん先に降りてて。 資料室に用事あるの忘れてた!」 苦しい言い訳をしながら、笑顔を向ける。 「早くしないと朝礼始まりますよ?」 釈然としない顔で降りた高原くんを見送り、引き留めた犯人を振り返る。 なんだか偉そうに顎で促す相手を睨み、私は泣く泣く腕を伸ばして10階の資料室のボタンを押した。
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