過去の男 田中さんちの孫、室岡葵くん登場

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まあ、今となっては淡い初恋の思い出なんだけど。 「……結婚ってどんなヤツとするんだよ」 「大学の同級生だよ」 「……同級生」 ますます葵くんの眉間のシワは深くなる。 なんだよー。何で怒るの? 私の結婚の何が気に入らないんだっつうの。 葵くんの理不尽な怒りに、ムゥッと膨れていると、彼は腕組みをといて姿勢をただし、妙に真剣な顔で私を見下ろした。 「いろは、お前さ…」 「な、なに?」 急に改まった雰囲気にたじろいで首を傾げると、葵くんは躊躇うように唇を噛んでから、少し息を吐き出し、大皿を両手持ったままの私にゆっくりと手を伸ばした。 「………なあ、もし、俺が」 葵くんの手が頬に触れる。 そう思った瞬間、 「いろは?」 理玖の声とともに、和室のふすまがスッと横に開いた。
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