十目さん

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「冬」 吐息は白い それが宵闇でゆらりくらりと燻るのだ 白はじんわりと黒にとけてゆく ドロりドロリ溶けている 私はそれが笑えて仕方ない 私の微笑も私の認識できないところまでとけていき 私は何処も生きていない ただまだ吐息は燻る燻る 黒は白にとけゆくようで 白は黒にとけゆくようで だから吐息を止めてはいけない 微睡みとけてはいけないのだ 宵闇に燻る白光が じんわりと黒を侵食するようだ 観よ 月光が踏みにじるように輝やき出したじゃないか 闇は飲み込まれまいと陰を創る 黒はさらに濃くなって 私はそれに必死に吐息を熱を吹雪を息吹をとかすのだ 少し面白くなって笑う 笑う 面白い程私は生きてる 生きたい生きたい生きたい その思いを表すかのように 白はやがて黒を包み出した あと少し…あと少し… 頑張れ頑張れと聞こた気がした 吐息は白い それを最期に私の命はゆらりくらりて燻れて消えた 【完】
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