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風紀室から出た途端に壁伝いにへたり込んだ。と同時に幽霊に戻る。瞬間、心の奥底で蠢いていた感情が脈打った。 ―ドクン…! ちょっと…キツイかも… 『……はぁっ…はぁ…あ、っ…!』 壁に凭れ掛かる様にして胸辺りの服をギュッと握り締めた。こんな事をしても収まらないが、気分の問題だ。現に少し収まった様にも思える。 しかし、それは本当に思えただけで、現状は悪化の一途を辿っていた。 気を紛らわせる為に何か他の事を考える。 今居る廊下は授業が終わったのか、生徒が沢山出てきていた。 生徒達は各々の休み時間を過ごしていた。まだ勉学に励む者、読書をする者、友人と談笑している者…と千差万別だが、皆楽しそう…そうでなくとも哀しみの色を出している者は居なかった。 『…うぁっ…!』 ……見るんじゃなかった。今の俺には、きつい光景だった。押し込めていた怨嗟の感情が再び激しく脈打った。 ―ドクンッ…ドクン! そこからはもう止められなかった。感情が雪崩を起こした様に次々と溢れる。思わず頭を両手で押さえるが止まらない。 (俺だってあいつらと一緒に授業を受けたかった。勉強もしたかった。学園の行事にも参加したかった。あいつらが勧めてくれた本を読みたかった。あいつらともっと話がしたかった。それで、笑い合ったり、時には本気でぶつかって、喧嘩して、最後には仲直りして、また笑い合いたかった。なのに、どうして…?どうして、俺が、俺だけがこんな目に…どうして、なんで俺を置いていった?いつも一緒にいたのに……あぁ…憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い…俺を置いていったあいつらも、平穏とあいつらを奪った転校生も、噂に惑わされ俺を淘汰した者達も、今幸せそうにしてるお前らも…!!皆、皆死んでしまえ!!) 『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』 俺の獣の様な咆哮は誰の耳にも触れず、廊下に反響することもなく、静かに消えていった。 『…はぁ…っ……はぁっ…………。』 少しだけ発散出来て、意識が戻ってきた。 座り込む俺を廊下にいた誰一人として注目していなかった。見えていないのだから当たり前の事だが、それすらも昔を見ている様で涙が零れた。 『……もう、独りは、…嫌…なんだ…』 呟いて静かに、眠る様に目を閉じた。 次に起きる時には、きっと、笑えますように…… そう、祈りを込めて目を閉じた。
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