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はっと深く苦い奇妙な夢から覚める。頬を伝う汗を拭いながら起き上がった。
……久し振りに…見た、な…一体…何年振りだ…?
それは出来る事なら消去してしまいたい程忌まわしい記憶。
自然と握り込んでいた拳を開くと、深呼吸をして心を落ち着ける。
『…すぅ…はぁ…』
数回深呼吸を繰り返すと、段々と落ち着いて来た。
落ち着いた思考は先程開いた手のひらをじっと見詰め、過去に思いを馳せる。
…こんな筈では無かった。死ねばあいつらを理不尽に怨まなくていいようになれると思った。醜い自分は消えて無くなれると思った。…楽になれると、思った。それなのに……
『…………はぁ…』
…やめだ。やめ。
こんな事を考えてもしょうがないのだから。
あの夢を見た後はいつもこうだ。考えたってどうしようもない事をうじうじ考える。
さて、気持ちを切り替えるか。今日は新入生が入ってくる日だ。
ここから出られないのならここで楽しむと決めた。どうせ俺の姿なんて誰にも見えないんだ、好き勝手やってやる。
とりあえず、入学式に出よう。
そう思い、入学式の会場を頭の中で思い浮かべる。場所は第2体育館。これだけは何年も変わらない。
幽霊だから飛べるが、あえて歩いて向かった。
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