渋谷

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その日、私は朝起きてから 椅子に腰掛けて 普段は吸わない煙草をふかしながら 死ぬことを考えてた。 実の事を言うと昨日私は死ぬはずだったのだ。 首を吊ってみたのだが 窮屈で気持ちが悪くて 途中で、「何だこれ?」と吹き出してしまい 自殺に失敗したってだけの話なのだが。 そこで朝から 今日こそは、と死ぬ計画を立てていたわけだが どうせ死ぬなら ちゃんと今年の頭に買った車のローンを返済してから死にたかったし もっと遊んでおけばよかったとか 親孝行出来なかったなぁとか 考えていた。 本当は、出来れば生きたかった。 生きればいいじゃないかと鼻で笑われるかもしれないが そういうわけにもいかないようになってしまったので せめて、死ぬ前に ちゃんと一つでもやりたいことをやろうと思ったのだ。 例えば …うーん、例えば。 本能のままに快楽だけのSEXを 動物みたいにするとか。 例えばね。 って言って、例えばだけど 割と悪くないかもなと思ったので とりあえずシャワーを浴びて 化粧をした。 どの道死ぬんだが どうせなら綺麗なまま 私の死体を見つけて欲しいと思ったから。 少しのお金を持って 私は適当に待ち合わせた男と渋谷で待ち合わせをした。 これからSEXをするのだ。 死ぬ前に一度 薄っぺらでもいいので快楽だけのSEXをしに行くのだ。 電車の中では酷く動悸がした。 落ち着かせるために唇をたくさん噛んだ。 血が出るまで噛んだ。
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