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  朝。 祖父が残した別蔵で、ボクは目が覚めた。 別蔵は、別名『隠し部屋』。祖父がボクに残してくれた、場所。昔手に入れた蔵で、住居として住めるようにリフォームされている。 そこで、ボクは寝起きをしている。一階の地下には、果実酒や味噌とか漬物とか置いてある。一階は、壁の代わりに引っ張り棒と暖簾の布とかカーテンの布で仕切り、箪笥や物入れで補強。床は、畳のある部屋以外は板。机や箪笥の下敷きに、カーペットや厚手の布を置いている。キッチンは、流行りのIH。ホームベーカリーや食洗機もある。 二階は、自室。同じく仕切ってある。空室は、客室に使うか思案中。 蔵なので、外壁は頑丈。窓を締め切れば、防音に最適。防火で防寒で、至れり尽くせり。夏は涼しく、冬は暖か。だけど、修繕費は高い。手入れもしておかないと、肌みたいにボロボロになるのが早い。メンテナンスは、大切。 ご近所は、ボクを知らない。無口で通している。だって、不安しかないから。 知られたら、根掘り葉掘り聞かれたら、不安になるし、なんか厭だからね。 仕事先迄は、車で移動。ネックウォーマーで、首から鼻先迄顔を隠してる。ネックウォーマーは、頭にも装着出来るから、頭から眉辺り迄被(かぶ)る。伊達眼鏡掛けたら、顔は判別不可能になる。耳に耳栓をして外出用の格好は完了。冬は、特にこの格好で出歩く。ご近所には、職業は事務員で。 本当は、獣医だと知られれば厄介事を持ち込まれそうで。そういうの、迷惑でしかないから。  
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