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のですか?」
「……」
マナトの質問に答えることなくイレルダは眼鏡を外し、ふぅと深い溜息を吐いた。そのしぐさがマナトを、リモを、そしてリエルを不安にさせた。
「……厄介なことになったものね」
「?」
「マナト、リモ」
イレルダはアマニの二人の子どもの名前を呼ぶやいなや二人の方向に向き直った。その表情はマナトとリモが今まで見た表情で一番険しく、同時に彼らが恐ろしいことを聞くことを予知させた。
「……こちらとしても非常に言いにくいのですが……、貴方達二人には父の死を覚悟してもらわなければならないかもしれません」
「!?」
「それは、どういうことですか……っ!?」
リモの質問に答えるかのようにイレルダは椅子から立ち上がった。
「二人とも、これを見てください」
「……?」
イレルダの言葉に一瞬戸惑ったが二人はイレルダに従い顕微鏡の中を覗いてみた。そこにはミミズのように身体をくねらせる生き物がレンズ一帯にうごめいていた。こんなおびただしい生き物が父の身体の中にいたのかと考えるとマナトとリモは身の毛のよだつ思いをした。
「マザー、これは一体……?」
「普通おなかが痛い時は胃薬を、頭が痛い時は頭痛薬を飲みますよね?」
「……」
イレルダの問いにマナトは深くうなずいた。そして、彼の返答を聞くとイレルダは話を続けた。
「しかし先程二人が見ていただいたウイルスは非常に特殊なものでいかなる治療薬も効きません。このまま放置していたらいずれダイアンは命を落とすでしょう」
「そんな……、お父さん……!」
イレルダの残酷な真実にリモは泣き崩れ顔をベッドの上にうずめた。それを見たリエルはなんとか彼女を励まそうとしたがかける言葉が見つからずそこでおろおろするしかなかった。
「……何とか……、何とか助かる方法はないんですか!?」
ありとあらゆる力を込めてイレルダに駆け寄るマナト。しかし、イレルダの態度は変わることなくただじっとマナトを見つめていた。
「母さんが死んでからずっと一人で俺とリモを育ててくれたんです……! 何でもしますっ! 父さんを助けてくださいっ!!」
「……本当に、『何でも』しますか?」
マナトを見つめる目を細めるイレルダ。彼女の問いに対し、マナトは力強くうなずいた。
「……はい」
「一つだけ、ダイアンを助ける方法があります」
「……!?」
イレルダの言葉に反応したのか
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