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先程まで泣いていたリモは泣くのを止め、イレルダの方に目をやった。それはリモの横に立っていたリエルも同じだった。
「その、助ける方法とは……?」
「彼に竜の血を飲ませるのです」
「竜の、血……?」
「竜の血はエネルギーの宝庫とも言われその血を飲んだものはいかなる病も治ると言われています」
「で、でもその竜はどこに……?」
「……ここから西へ向かった先に『狼の森』がありますよね? そこを抜けたところに廃城があるのですが竜はそこに棲んでいると言われています」
「城……? どうして竜がお城に棲んでいるのですか?」
質問したのはリエルだった。彼女の質問に答えるため、イレルダはリエルの方向に向き直る。
「もともと城が建つ前はそこが竜の棲み処でした。しかし周りの人間たちが竜を追い払いそこに城を建てたのですが棲み処を奪われた竜は怒り、城に住んでいた人間たちを追い出し以来城には竜が棲みつくようになったのです」
しかも人間がいないから城の周辺には魔物がうじゃうじゃいるとか、とイレルダが付け加えると聞いていたリエルの顔は一気に青ざめた。
「言うまでもありませんが、竜は魔物の中でも最上級に位置するモンスターです。今の貴方たちの実力で戦えば一たまりもないでしょう。それどころか途中で通る『狼の森』で力尽きるかもしれません。それでも竜の血を手に入れることを望みますか?」
「はい」
「例え途中死ぬことになっても?」
「……はい」
イレルダの口から発せられた『死』という言葉に一瞬躊躇したが、それでもマナトの決意は変わらなかった。「イエス」と答えたマナトの瞳に一点の曇りがないことを確認すると、イレルダは少しだけ笑みを取り戻した。
「よろしい、今夜はもう遅いからウチに泊まりなさい。シスター、マナトとリモを部屋まで案内して頂戴」
「分かりましたマザー! マナトさん、リモさん、気を付けてくださいね」
「あら、何を言ってるのです?」
「へ?」
イレルダの言葉にマナト、リモ、リエルの三人は目を丸くしてきょとんとした表情でイレルダに視線を送った。
「貴女とマナトが竜の血を取りに行くのですよ? シスター・リエル」
「……」
「……」
「……」
しばらく沈黙が続いた後、教会中に「えええええっ!?」と叫ぶリエルの声がこだました。
「えっ? ちょ、マザー……、どうしてワタシが竜の血を取りに行かなくちゃならない
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