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とリエルは医務室を後にした。
「くっ、うう……!」
まさか一日に何回も痛い思いをするとは思わなかった。今朝は父と剣の修行で倒され、昼は父のげんこつで気絶しそして今、父と自分の命を狙いにきた暗殺者に投げ飛ばされた。
教会に来た時太陽は西に傾きかけていたのにいつの間にか東の空に月が上り星空に変わっていた。辺り一面は闇に包まれ光と言えば空にある月と、先程まで自分達がいた医務室から洩れている灯りぐらいだった。そして医務室の灯りを背に向け、アレグリアはゆっくりとマナトに歩み寄った。
「ククク、ここなら本を使った目くらましもできまい」
「くそっ……!」
マナトは投げられた痛みを堪えながら立ち上がり、再びアレグリアに十字架を向けた。そして、力いっぱい雄たけびをあげアレグリアに向かって走り出す。
「えいっ! やぁっ! とぅっ!」
「……」
何とか攻撃をあてようとするマナト。しかし、アレグリアは身体をそらしたり下がったりすることでマナトの攻撃をかわしていった。そして、マナトが十字架を縦一文字に振り下ろした後アレグリアはマナトのみぞおちに膝蹴りをお見舞いした。痛みが、腹部から伝わると同時にマナトの口から粘り気のある液体があふれ出す。
「……汚ぇんだよ、ガキが……」
蹴られた腹部を必死で抑え込むマナトの顔面に向かって、アレグリアは拳を放った。再びマナトの身体が遠くへ飛ぶ。
「ぐっ、はっ……!」
今度は鼻から血が出てきた。腹部と鼻、二つの急所からこみあげる痛みをマナトは耐え難かった。そんなマナトにアレグリアが指を揃え、とどめをさそうとゆっくりと歩み寄る。アレグリアが自分に近づく度に、マナトは自分の死を感じた。もし自分が死んだら父さんはどうなるのだろう? 誰かが代わりに竜の血を取りに行くのだろうか? それよりリモは? この後一緒に殺されるのか? そんなことばかりが脳内で渦巻く。そうしている間に、アレグリアはマナトの目と鼻の先に立っていた。攻撃範囲内だ。
「……死ね」
アレグリアは爪をマナトに向けた、次の瞬間だった。
「てりゃあっ!」
「……っ!?」
突如アレグリアの背後から十文字槍を構えたリエルが飛んできた。アレグリアはそれに反応して横に飛び、リエルの振りかざす槍攻撃をかわした。
「チッ……!」
アレグリアにとってはあと一歩のところで、マナトにとっては間一髪といった具合だ
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