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力を込めた。
父の剣が少年のみぞおちに当たろうとしたその瞬間、家の窓が突如開かれ髪を二つ結びに編んだ少女が顔を出した。
「二人ともー、ご飯できたよー」
「「!」」
父は剣を止め、少年は目を見開き、少女に向かって「はーい」と返事をした。
テルスター家の家は木の柱と煉瓦の壁、瓦の屋根でできていた。父親のダイアンと息子のマナト、妹のリモは必ず三人で食事をとることが通例だった。
「いいかマナト、お前は若いからある父さんより力はある。けどだからといって力ばかりに頼っていては駄目だ。攻撃に力をかけると肝心の体力がなくなって長期戦で不利になるぞ」
「はい、父さん」
「攻撃を繰り出す時は力を抜いたほうがいい。むしろ力を抜いたほうが、力を込めた時よりも強力な攻撃が出せるんだ。鞭の原理と一緒だよ、分かるか? マナト」
「はい、父さん」
「マナト! ものを食べながら喋るなと何度言ったら分かるんだ? 食事の礼儀作法も剣術の修行のひとつだぞ!?」
「いや父さんが先に話しかけてきたんじゃないか!」
「なんだマナト! 親に向かってその口のきき方は!」
「……」
リモは苦笑しながらマナトとダイアンのやり取りを見ていた。テルスター家の食事風景はいつもこんな感じだ。ダイアンが剣術の話をし始めてマナトはそれを「はいはい」と聞き流す。しかし次第に関係のないことまで口出ししてきてマナトがそれに逆上する。マナトとダイアンは席を立ち口論を始める。このまま喧嘩に突入しそうになると……。
「二人とも、ご飯冷めちゃうよ?」
リモが止めに入り、食事が再開されるのだった。
家から少し離れたところ、そこにテルスター家の畑がある。畑には白菜や大根といった野菜が育てられており、それがテルスター家の食糧元となっている。ちなみにさらに離れたところにはコメを育てるための田んぼもある。
「いいかマナト、たかが農業だからと言ってなめるなよ? 畑仕事だって立派な剣術の修行だからな」
「はい、父さん」
ダイアンは鍬を肩に担いで畑の中に入っていった。続いてマナトとリモも畑に足を踏み入れる。
「普通の、剣術をやっていない農家は腰を曲げて鍬を振り下ろすけどおれ達戦士は違う。まず足を肩幅に広げて……」
「『足を肩幅に広げて椅子に座るように膝を曲げて腰を落とす。これにより足腰の鍛錬となる』、だろ? もう何百回も聞いたよ」
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