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おり、バケツに泉の水を汲んで両腕を伸ばした。一方リモは両手で一つのバケツを抱えていた。彼女の体力ではそれが精いっぱいだからだ。
「そして坂はこけないように後ろに重心をかけブレーキをかけながら降りる。こうすることによってバランス感覚が身に付くんだ」
そう言ってダイアンは坂を下り始めた。長年この水汲みを続けてきたためか器用に坂を下りていく。続くマナトもダイアンほどではないが持前の力強さを頼りに坂を下りて行った。だがリモだけは違った。彼女はバケツを前に持って下りていくためどうしても重心が前に行ってしまう。なんとかこけずに下りようとするがその際スピードが鈍り先に行ったマナトとダイアンの間にさらなる距離が広がる。
「ま、待って二人とも……!」
なんとか二人に近づこうと加速させるリモ。しかし焦れば焦るほど足はよろめき、バケツから水があふれ出す。
そして、リモのつま先が石に当たり彼女の身体が前へと倒れそうになる。
「あっ……!?」
「!? リモ!」
兄のマナトは妹の危機を察し、両手に持っていたバケツを投げ捨て妹のもとへと駆けだした。マナトが走り出すと同時にリモはバケツの取っ手を離し、両手を地面に着こうとする。
だがそれよりも早くマナトがリモの身体を受け止めた。リモは地面にこけずに済んだのだ。
「大丈夫か? リモ」
「うん、ありがとう。お兄ちゃ……」
ん、と言い終わる前に兄の頭上からリモが先程まで持っていたバケツが落ちてきた。バケツは見事マナトの頭を覆いかぶさり、中に入っていた水は彼の衣服をずぶ濡れにした。
「……」
「……大丈夫? お兄ちゃん」
「うん……」
そう言って頭からバケツを取るマナト。その時の彼はどこか悲壮感を帯びた笑みを浮かべていた。
「もう一回汲みに行こうか……」
「うん、そうだね……。でも、その前に着替えてきたら……?」
「……そうだな、ちょっと着替えてく……、うわあああっ!?」
「? きゃあああっ!?」
マナトは振り向くやいなや突如叫び声をあげた。何事かと思いリモもマナトの方向に目をやると悲鳴をあげる。
二人が目にしたのはバケツ頭の人影だった。首から下は男性のもので全身ずぶ濡れだ。右手には二個、左手には一個のバケツを手にしておりしかも右手のバケツの二つのうち一つは中身が空だったが内部が濡れていることから察するに少し前まで中に水が入っていたことを
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