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さんの傷を塞がないと……」
「分かった、急いで包帯を持ってきて!」
「うん!」
そう言ってリモは家に戻り包帯を取りに行った。
教会。それは祈りの場所であり傷ついた者を癒す場所。そして、命からがらに逃れて着た者を守る神聖な場所でもある。
「えいっ! やあっ! とうっ!」
そんな神聖な場所の付近で、十字架を槍のように突いたり引いたりしている青い瞳の若いシスターがいた。彼女の身体が前後するたびに、帽子の下から垣間見える金色のロングヘアーが揺れる。
「……」
その若いシスターを見守るのは年老いたシスターだ。癖のある白髪に小柄でふっくらした体格とは裏腹に、丸渕眼鏡の奥にある深緑色の瞳は威厳に満ちていた。
「もっと素早く十字架を引きなさいシスター・リエル! それでは十字架を敵に掴まれてしまいます!」
「はい! マザー・イレルダ!」
マザー・イレルダの言葉に呼応し、動きを速めるシスター・リエル。彼女の額から流れる汗がキラリと光る。
「えいっ! やあっ! とうっ!」
「狙いが雑になってきましたよ? それで敵が倒せますかシスター?」
「す、すみませんマザー!」
「今度は突くスピードが落ちてきましたよシスター!?」
「はい! マザー!」
「シスター!」
「マザー!」
「シスター!!」
「マザー!!」
「シスタァーッ!!」
「マザァーッ!!」
「マザー! マザー・イレルダ!」
「シス……、あ、あれ?」
突然入ってきた声にリエルは目を丸くした。聞こえてきた声は明らかに自分のものではない。ではイレルダか? と思いイレルダに目をやるが彼女もきょとんとしており明らかにリエルと同じ心境だった。
「マザー、今よろしいですか?」
「……」
「……」
リエルとイレルダは声が聞こえてきた方向に目をやった。そこには父親をおぶった少年と、彼の妹が立っていた。リエルとイレルダは二人の姿を見て声の主が誰なのか理解した。
「あらこんにちはマナト、それにリモも」
「こんにちはマナトさん、リモちゃん」
朗らかな笑みを浮かべ、気さくに声をかけるリエルとイレルダ。だが二人の様子がおかしい。いつもなら挨拶を返してくれるところなのだが今の二人は額から汗をながしながら息を切らしていた。そしてマナトの背後には、ぐったりとうなだれたダイアンの姿があった。
「……何かあったのですか?」
リエルとイレルダの顔から笑み
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