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第1話「テルスター家と暗殺者」
朝。山々は霧に包まれていた。木も、川も、土も、そして、そこに棲む生物たちも、霧に抱かれ未だ夢の中にいた。
……いや、すべての生き物が眠っていたわけではない。山中にある一軒家の庭で、対峙する二つの人影があった。
一つは紺色の服を着た少年で左半身は正面を、右半身は斜め前を向けて立ち、両手には木で作られた剣を握っていた。
その少年の正面に立っているのは彼の父親だろうか無精ひげを生やし、少年より長身の男性が立っていた。彼もまた少年同様身体を半身にそらし、剣を握りしめていた。
「……」
「……」
まるで獲物を狙うかのように互いを見つめ合う二人。一歩も動かないその様は、足の裏に根がはってあるのではないのかと見ている者を思わせた。
そして、二人の間に、山々に穏やかな風がなびく。その瞬間、二人は地面を蹴り、たがいに向かって突進した。
「はああぁっ!!」
「てりゃあっ!!」
少年の剣が、父親の顔面に目がけて一直線に振り下ろされる。父親はそれを察知していたかのように少年の剣を払いのけた。すかさず青年は、父親のみぞおちに突きを放つも再びふさがれてしまう。
「えい! やっ! とう!」
「はっ! とう! やっ!」
気合と共に攻撃を繰り出す少年。それに呼応するかのように父親は彼の攻撃を塞ぎ、かわしていった。
「くそっ……!」
自分の攻撃がなかなか当たらず、焦りと共に攻撃を繰り出すスピードが加速していった。しかし攻撃の速さが増す度に攻撃が大振りになり、動きが雑になっていった。そして、そんな雑な息子の動きを父は見逃さなかった。父親は横一文字に振られた剣をしゃがんでかわし、息子の足を剣で払った。
「あっ……!?」
少年の身体は剣の速さと重さに耐えきれず宙を舞い、地面に叩きつけられた。背中を通じて全身に衝撃が走る。
「くっ……!」
痛みに堪えきれず青年は思わず苦悶の表情を浮かべた。だが父親はそんな苦痛に顔をゆがめる息子のことなど気にも留めず剣を逆さに握り、息子に向かってとどめの一撃を振り下ろした。
「はあっ!!」
「……っ!」
まだ剣が届いていないにも関わらず気合の声を聞いただけで少年は目をつむった。少年が目を閉ざしている間にも父の剣先は少年のみぞおちに向かって少しずつ近づいていく。
ああ、もう駄目だ。少年は激痛を伴うことを覚悟し、せめて少しでも痛みが和らぐようにと腹筋に全身の
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