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第2話「狼の森」
狼の森はセントポーリア教会から歩いて三十分ぐらいのところにあった。狼の森には多くの魔物が棲んでいるがその大半が狼のため「狼の森」と名付けられたという。
そして、「狼の森」という恐ろしい名前とは裏腹に森の中は幻想的な空気に包まれていた。上を見上げれば木漏れ日が宝石のような輝きを放っており木々には魔物とは違う鳥やリスといった動物が巣を作って棲んでいた。地面を見渡すと市場や花壇では見かけない珍しい植物が咲いていた。そんな珍しい植物を見てリエルは「この花を売ったらいくら儲かるかな……」と修道女らしからぬことを考えていた。
「……ん?」
突如草むらから葉と葉がこすれる音が聞こえてきた。どうやら中に何かがいるみたいだ。それに気づいたマナトとリエルは、手にしていた武器を構える。
「(リエル、草むらに何かいるぞ……)」
「(もしかすると、魔物かもしれませんね)」
「(ここは、先手必勝でいく!)」
「(はい!)」
阿吽の呼吸で作戦を確認し合った二人は草むらに向かって剣と槍を振り下ろした。次の瞬間、草むらに隠れていたものは悲鳴をあげながら勢いよく飛び出してきた。
「ぎゃああああっ!!」
「「……っ!?」」
突然の叫び声にマナトとリエルは驚いてしりもちをついた。その叫び声は明らかに人のものであり出てきたのもまた人間だった。
草むらから現れたのはマナトと同じ歳ぐらいの金髪の少年で服装は白いシャツの上に革のベスト、ジーンズにブーツを履いていた。そして腰には左右にそれぞれ一本ずつ短剣を差していた。
「いてててて……、いきなり何しやがんだこの野郎っ!!」
出てきた少年はマナトとリエルに殴られた頭を押さえながら二人に抗議した。
「あ、いや、ごめん……」
「というか、なんでそんなところにいるんですか?」
「ああ?」
少年は不満そうに腕を組んだ。その間マナトとリエルは尻に着いた土埃を払って立ち上がる。
「何って魔物から隠れていたのさ。ちょうど魔物に追われててね、もしオレが死んだらアンタらどう責任取るってんだ?」
「あ、ああすまん。こっちもてっきり魔物かと思って……」
「あの、お詫びと言ってはなんですがこれを受け取ってもらえませんか……?」
「ん……?」
リエルが少年に何か差し出す。彼女の手のひらの上には、1ゴールドが乗っていた。
「……」
「……」
ただでさえ物静かな森なのにさらに
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