第1話 鏡

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 寒さで目を覚ました私は、いつものようにカーテンに手を伸ばし空を見た。空は白くて小さな何かを降らせている、それが雪だと気付くのに時間は掛からなかった。  天気予報でも雪の話をしていた、だから今日降っても不思議じゃない。  寒さから二度寝したい気分を跳ね除けるように布団から出て、暖房の電源を入れてからベランダ側のカーテンを少し開けた。 「寒いわけだ、辺りが白い。大丈夫かな?積もったら困るんだよね」  窓からは、ベランダと庭の木に積もった雪が見える。銀世界とまではいかなくても、景色は白を増やし止む気配がない。  静かにユラユラと降る雪は、日常の風景を白く染める。 「今日は、車の運転は無理かな」  掴んでいたカーテンを離し、外の景色を遮断する。  雪の日の車は嫌いだ、とても悲しい昔を思い出すから。  私には白でなく赤い雪に見える。
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