第3話 選ばれたのは

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 その骨董屋は洋介さんが言った通り、店の御主人の死後 閉店している。サイトによると、骨董屋に強盗が入り店の御主人が殺害されたと記述されていた。 (もし この事件で鏡が盗まれ、今博物館にある鏡と同じ物なら どういった経緯があって此処に。あの鏡は、都市伝説の鏡なの?)  洋介さんは皿だと言っていたが、もしかしたら表だけを見て 皿と思った可能性がある。  次に都市伝説を調べてみた。伝わっている鏡は様々で、装飾が有るものから無いものまでイメージも違っていた。 (海外から渡ってきた鏡ってのもあるな。でも・・・)  でも共通点がある。 『月の光りを浴びさせる』 『叶える大きさによって捧げる人数の数』 『女の夢を見る』 『女の幽霊が問いかける』 (この都市伝説が あの鏡と関係しているなら、誰かが願いを叶えてもらう為に周りの人を捧げた人がいる。それも身近な人が)  私はメモ帳に、今回 倒れて入院した人物の名前を知っている限り書いた。 ・バイトの真弓くん ・夏生先輩 ・美術館スタッフ ・警備員二人 ・館長の奥さん  そして・・・私の両親。やはり、あの鏡は本物なのだろうか?  鏡が届いて一ヶ月が経とうとする ある日、残業で残っていた私は 帰る前に警備員に頼み鏡を見に来た。  鏡は窓から差し込む光を反射して、床に夕陽を写し出す。 「綺麗になってる・・・」  誰かが磨いているのか、それとも生命を奪って綺麗になっているのか。  どちらにしても、このままにしては駄目だと感じ、鏡に手を伸ばす。 「何をしているんだい?平井君」  静かな口調だけど、怒りが混じる声が私を呼んだ。 「館長」  振り返った私を、冷たい悪寒が走った。沈む夕日で暗くなった館内で、薄気味悪い笑い声を出して私に近付く館長。 「ひ、光が当たっていたので、少し移動しようかと」 「それは困るよ平井君。私の願いが叶わなくなる」  次に見えた光景に逃げなきゃと思っても体が言うことをきかない。  とっさの判断も出来ないまま、私は館長が降り下ろした木の棒で頭を殴られ、気を失った。 「やっと見つけたんだ。ここまで来て、引き返せるか」  何時間が経ったのだろうか、意識を取り戻した頃には辺りは暗くなっていた。  頭に痛みを感じ、そこで館長に殴られたことを思い出す。 (っ…。そうか、私 殴られて……)
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