第3話 選ばれたのは

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 そんなことを考えていると、後ろから気味の悪い音がした。ボキッ!、グシャッ!などと、何か硬いものと柔らかいものを叩き、潰している音が。振り返るのが怖くて、動くことが出来ない。  動かずにいると突然、子供の叫び声が後ろから聞こえ、辺りに反響した。私は驚きのあまり起き上がり、子供の声がした方向へ振り返る。  次に見えた光景に、更に恐怖を大きくした。数名の男女と一人の子供が視界に入ったのだ。子供は倒れている男性の近くで泣きじゃくり、複数の男女は男性の顔を判別出来ないくらい殴る館長を見ていた。 「パパー!!」  大声で泣きじゃくる子供に近付き、館長の方を見せないように抱き寄せ、音が聞こえないように耳を塞いだ。 (どうして、たかし君が此処に?)  近付いた時に、男の子が孝君だと気づく。  よく見ると離れた場所に洋介さん、館長の娘、孝君の横で血を流して倒れる浩さんが居た。浩さんは、胸にナイフが刺さり既に…。 「お父さん、止めてよ。どうしてお祖父ちゃんを・・・。私たちも殺すの?」  館長の娘さんの言葉で、殴られている男性が元館長だと知る。  どうして館長は人を殺めているのだろう、そんな言葉が頭の中をぐるぐると回る。 「そう殺すんだ、時間がないからね、1ヶ月で捧げた命で私の願いは大きく叶う。そこのガキと平井君の知り合いが、私と同じ強い願い事が有るようだ。だから、消えてもらうよ」 「じゃぁ、やはり千波さんが見せた鏡は本物…都市伝説ではなく」 「そうだ。だが願いを叶えるのは私だ」  館長は睨む洋介さんに近付くと、足を強く踏んだ。 「ぐっ・・・」  どうやら足に怪我を負わされて、上手く足が動かせないらしい。館長が踏んでいる洋介さんのズボンは、みるみる血に染まっていった。  鏡の願いを叶えてもらう為に私たちを?じゃぁ、原因不明で入院している夏生さんたちも?  私は夏生さんが救急車で運ばれた日のことを思い出した。倒れた夏生さんの首に【赤紫の線】が浮かび上がっていたと聞いた。その線は、柳子が父を襲った時の刀傷の跡だとしたら、館長が名指しして呪いを掛けたことに。  そんなこと非化学的で現実に起きるはずが無い、なら毎日見てる夢は?両親たちの意識不明の原因は?  考えれば考えるほど混乱した、そして最終的に柳子と繋げてしまう。
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