第4話 鬼ごっこ

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 目を開けてみると、そこには館長の後ろで私を見ていた柳子が立っていた。 「つまらない人ね。『彼の父を見つけ出し、辛い罪を償わせて』とか『弟を生き返らせて』とか『館長を消せ』とか言えばいいのに、貴女は他の人より望みが強いと思ってたのよ。その願いは、入院してる者達と満が殺した者たちで叶えられる。満の願いは、館長として継いだ美術博物館を有名にすること」 「柳子は何がしたいの?好きな人と一緒になれないからと父を殺して」 「言っておくけど、私は柳子であって柳子じゃないわよ」 「えっ?」 柳子はクスクスと笑った。何を言ってるの?目の前にいる女性は夢で何度も見ている柳子の姿、見間違うはずがない。 「私は柳子の心から生まれたリュウコ、世間では呪いと呼ばれているわね。私は柳子の父の血によって新しい呪いとなり、この世に生まれた。そして、柳子の死で完成した」  ケラケラと笑ったかと思うと目の前に立ち、私の頬を撫でてきて悲しそうな表情になった。まるで、呪いとして生まれたくなかったと言いたげに。 「おかげで私は、人の死で願いを叶える鏡となってしまった」 「嫌なら願いを叶えずに、鏡として一生眠ってれば良いじゃない」  そう、叶えたくないなら人間の願いなんて見なければいい。そしたら、誰の命も奪われずにすむ。  柳子は首を横に振ってニコリと笑うと『アナタの願いを叶えます』と言った。 「私、貴女を気に入ったわ。だから千波が望まなくても、再び貴女の前に現れるでしょう」  両肩を掴まれたかと思ったら、後ろに押された。後ろは いつの間にか足場が消え、崖から落ちるように私は落下した。 「人間は、願いの為なら人を簡単に殺す。また会いましょう千波」
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