第1泡。〇.

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「まず、入学式会場に行く前に、覚えておいてほしいことがある。」  担任はそのあと、この高校の掟を三つ言った。 校則とは全く違って、命に係わることまで言っていた。確かに、この高校には危険が付き物だということは間違いない。だが、みんなそれを知ったうえで入学してきたはずである。 「この掟はいつでも、どんなときでも頭の片隅に入れておかねばならない。わかったなー。」 担任は、ギランッと獣のような眼を生徒に向けて、すぐにこやかになり話を続けた。  俺は一番前の席だ。きっと担任からもクラスの人たちからも、一番見やすく目立つのだろうなと思ったせいか、マネキンのようにただ固まって、担任の話を聞くフリをして受け流した。 そろそろ会場へ向かう時間だ。と俺たちを廊下で名前順に並ばせると、入学式会場へと向かわせ、担任は教室へ入って行った。 なんだ、ついていくものではないのか。そう思いながら前の人の頭を見る。 「おい。」 あいにく隣は兄だ。 名前順で並ぶと、どうしても兄が隣になってしまう。 「お前、今日寝坊したんだろ。」 俺を見て吹きだす兄に、いつものようにスルーをかます。 「おいおい、また無視かよ。兄貴を無視するのは良くないだろ。」 「...お前だろ。」 「え。」 「お前が目覚まし止めたんだろ。」 体大見当はつく。俺は毎日毎日目覚まし時計の音で起きている。しかも最近新しいものに変えたばかりで、すぐ壊れるはずがない。 そうなると、最終地点にたどり着くのはコイツの元だ。 「いやいや~。それはないよ。だってさ」 「おいそこの双子ー、静かにしろー。」 「す、すみませーん。」  後ろから担任が注意してきた。いつの間に後ろにいたのだろうか。教室に戻ったのは、それほどの用ではなかったのか。 「また後で話そう、弟よ。」 「...。」 前の人が、いきなり止まった。というか、列全体が止まった。 担任たちが後ろから前の方へと走って行く。俺の方からは見えないが、会場の前まで来ているのだろうか。すると、前の人はぞろぞろと後ろに下がってきた。俺もそれに合わせて後ろに下がる。 「会場には一列に並んではいる。名前順でさっさと並んでさっさと入れよー。」 違うクラスの担任が、全クラスに聞こえるように大きな声で言った。  一列に並び終わり、列が前へとどんどん進んで行く。それに近付き、拍手の音が大きくなる。
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