序章

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 仕事を終えたビジネスマンで賑わうバーの片隅で、短いブルネットの髪をした細身の女と、赤毛の男がヒッソリと呑んでいる。  ブルネットの髪の女…ジョナはゆっくりとグラスを口に運びながら、後輩の話に耳を傾けていた。 「……ジョナ!!俺は思うにですねぇ!この地域の人間は堕落してんですよ!…だから、俺達の仕事は増える一方なんですよ!!人間が増えすぎなんですよ~、問題は~……解決しなきゃなんないんですよ!?解ります?」  言いながら、手に持つグラスの中身を勢いよく喉の奥に流し込み、ジョナに向き直る。 「はいはい、わかったから。トミー、あなた呑みすぎよ?そろそろ止めないと明日の勤務に差し支えるよ」  ジョナがトミーを呆れた様子で諫める。すると彼は陽気な口調で。 「いーんです!俺ぁ、ケーカンなんて辞めてやるんです~。今日は潰れるまで呑みたい気分なんで~…」  とケラケラと笑いだした。ジョナは肩を竦めながら、いつになく悪酔いをしている彼の扱いをどうすれば良いのかを考えていた。  彼にとっての今日は良い日とは言えなかった。彼の抱える問題は、彼にしか解決出来ない類いの物だ。 image=491039120.jpg
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