序章

3/7
124人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
 ジョナとトミーの職業は警官だ。街の治安と善良な市民を守る為に、時として犯罪者に銃を向けて命を奪わなければならない。また、卑劣な犯罪から善良な市民を守る事が出来ない場面にも遭遇する。人間は万能ではない。不足の事態や判断ミスによって、事態は急激に悪化してしまう。  今日、トミーは自分の能力を過信した為に、犯人を深追いし過ぎてしまった。追い詰められた犯人はジョナに発砲し、逃走をはかった。ジョナが撃たれた事でパニックを起こしたトミーは逃げる犯人に銃を向けて乱射した。  ――その結果、犯人は急所を撃ち抜かれ出血多量で命を落とした。まだ10代の少年だった。  幸いにもジョナは防弾ベストの上に被弾したため、痛みが強いわりには青アザが出来る程度の軽傷ですんでいた。暴走するトミーを諌められなかった自分にも責任はあるのだから、ケガについてジョナはトミーに「気にするな」としか言葉はかけられない。  人を初めて殺したトミーに「運が悪かったのよ」と言った所で気休めにもならないだろう。――警官とは業が深い職業だ。場合によっては合法的に人の命を奪わなければならない職業なのだから。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!