序章

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 トミーに必要なのは、割り切るという感覚だ。何かを守るという事は、何かを捨てなければならない。綺麗なままで強くなれる程、現実は甘くはない。  いざという時に動く事が出来なければ足手まといになるだけ。銃弾が飛び交う命懸けの現場で、パニックを起こすような人間ほど邪魔なものはない。  少なくともトミーは、ジョナが撃たれた事で冷静さを欠いて、必要以上に銃弾を犯人に浴びせて殺してしまった。結果だけ見れば、その行為は正当防衛として十分に判断される案件であり、書類上の問題は何もない。1人の卑劣な犯罪者が街から消えただけでしかない。  だが、それとトミーの内面の問題は別だ。彼が人を殺してしまった事実は変わらないし、警官を続ける限り彼はこの問題に必ずぶち当たってしまう。  その事実にどう向き合って行くのかは彼にしか答えは出せない。酔っ払いながら[警官を辞める]と言った選択肢は間違いではないのだろう。  人を殺すという行為に、真剣に向き合い、考え、自分の倫理観と折り合いをつけられなければ、銃を握るべきではないのだから。
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