第3章 ー絶望ー

3/17
123人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
 しかし、危険だからといって街を迂回するという選択肢を選ぶことはできない。人工物が少なく隠れる場所がない場所で、火を使うことは危険を自ら呼び寄せる行為に他ならない。  だが火を通さなければ、水も食べ物も手に入れることは難しい。それを解決させるには、火が使える場所である程度の飲料水の確保と、缶詰など火を通さなくても安全なモノを集める必要がある。街の中ならそれは可能だ。  人のいないアパートに入り込み、光が漏れないように細心の注意をはらいながら暖炉で煮炊きすればいい。煙も目立たないように気をつければ、壁のある暖かい場所で寝起きすることが出来るのだ。アリーシャにとって束の間の安息だとしても、それはとても重要な休息だった。  ふう、とアリーシャは息を吐き出しながら妹の顔を見た。モゾモゾと身じろぎして寝返りを打つ妹は、安らかな表情で寝ている。この平穏をいつまで続けることができるのか、アリーシャは不安に思う。  こうしている間にも、悲鳴や笑い声が遠くから響いてくる。その悲鳴が誰の物かはわからない。次に悲鳴をあげるのが自分達ではない事を祈り続けた。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!