序章

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 命に貴賤(きせん)はない。犯罪者もただの人間だ。ジョナは、それを忘れているわけではない。忘れてはならない事柄だと肝に銘じている。  しかし、それが綺麗事である事も理解していた。手を汚す仕事を選んだのは自分だ。法律から外れた人間を殺すのが自分の仕事なのだ。銃は身を守る道具ではなく、命を奪う道具だ。  ジョナは、尚もくだを巻き絡んでくるトミーを横目にグラスに残っているウィスキーをゆっくりと飲み干した。 「トミー、明日は休みなさい。ボスには私が上手くとりなしておくから。そして、お酒抜きで、じっくり考えなさいな………続けるか、辞めるか」  言ってジョナは、伝票をスッと手に持って帰り支度を始める。 「ジョナ?」 「ここは私が持つわ。私は貴方の選択を尊重するから、決まったら教えてね?……さぁ、家まで送るから、コート着て!」  ジョナはトミーを強引に席から立たせ、出口へと引っ張って行く。
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