第1章 ― スラム ―

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 アンディは、夢の中に居た。その夢は決まっていつも同じだった。  最初に上も下も解らなくなるような闇で満たされた空間に投げ出され落下する。落下したかと思えば、顔も名前も分からない群衆の中に自分が立っていた事に気がつかされる。  そこには家族も知り合いも居ない。群衆の中で孤独である事を認識した瞬間に夢は終わりを告げ、意識が浮上し始める。  浮上し始めた意識は覚醒へと向かい、[外]からの音がアンディの耳に届く。彼の家の外ではしゃぐ子供の笑い声とお昼を報せる地鳴りのようなサイレンが鳴っている。その音を聞いてようやく彼は目を覚ました。  目が覚めると夢の内容は彼の記憶から消え去ってしまう。ただ嫌な夢を見たという感覚だけが残り言い様のない疲労感が彼の寝起きを最悪な物へと変えてしまう。 「うるせぇ!遊ぶならよそで遊べよクソガキ共が!!」  アンディは外の子供達に向かって怒鳴り声をあげた。だが子供達はアンディの声に刺激されたのか、より一層騒がしく遊び始める。 「ちっ……アイツら調子にのりやがって……いつかぶち殺してやる」
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