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「どんだけ長い自分探しだよ!」
「『崇高な人』で『タカト』!?名前負け!」
漣斗とシエラがバッサリ切り捨てた。
「だけどそんだけフラフラできるって、羨ましいよなあ。うちの親にも冷静になって息子のレベル考えて欲しいよ…」
漣斗が本音でボヤく。
「人間キライ、ってこと?管理人の仕事もちゃんとやってるかアヤシイ」
シエラが呟いた。
鳳雛荘を出てからたっぷり一時間は経っていた。
アパートには誰か他の住民が帰って来る気配はなく、ただ101号室のカーテンの隙間からの光と奇声が漏れて来るだけだった。
あたし達は、団らんの灯りが点る住宅街の薄闇の中、置き去りにされたように暗く沈み込む墓標のような建物を後にした。
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