〈1〉ミステリー研究会、存続の危機

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「まて、聞いたことがあるぞ…!IQ190のバケモノがうちの高校に転校して来るって噂があった」 「そうだ。皆、戦々恐々となってたんだが結局特進の方には来ず、デマだったんだと一同胸を撫で下ろした…確か名前は」 「ちょっと…!バケモノ呼ばわり、ってひどくない?カイは」 ちょっと変わってるけどいい人だよ、とあたしは言いたかった…けど、遮られた。 「黒夜叉 灰…!思い出したぞ!」 「何でこんな場所で遊んでる!」 カイはポケットに手を入れたまま、肩をすくめた。 「君達の言うカリキュラムの違い?なんて、僕に言わせれば測定誤差みたいなものだけどね」 本来首都圏の有名難関高ラインの学力を持ち、入学式前に公立高校一学期分の課題を自力でクリアして入学して来る特進クラスの生徒達。少なくとも私たち「普通クラスの凡人達」に対して並々ならぬ優越感をひそかに持っている彼らはカイの言葉にカチンと来たようだ。 だが、言い合いの間、「数学オリンピック」に出場者だという「数学研究会」の部長だけは、引き寄せられるようにホワイトボードに近づき必死に証明式を追っている。 「発表されてから300年間、世界中の天才数学者が挑戦して誰も解けなかったんだぞ…。いくら何でも、まさか君が」 「才能や閃きに年齢は関係ないって、そう思わない?」 カイはすまし顔で答えたが、相手は半信半疑だ。
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