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そうか。
カイは、私を守ろうとしてくれてる。
こんなのんびりした街のちょっとした通勤通学ラッシュでも、あたしを一人にさせまいと。
「授業、休んじゃうの?」
カイの背中に問いかけて、改めて思い出す。
カイに授業は必要ないし、卒業とか進学とか…そんなことのために高校に通ってるわけじゃない、もともと通う必要すらないってことを。
「いや、済んだらちゃんと行くよ?サボったら緋色に殺される」
「あはは。じゃ大迫先生に、家の事情で遅刻するって言っておくね」
「助かるよ」
バスの乗り口から声を掛け直したあたしに、カイは遠ざかりながら右手を振って答えた。
二言目には「合理的か否か」と口にする男の子が、あたしのために黙って非効率的で非合理的な方法を選んでくれていた…。
あたしは胸の中がじんわり暖かくなった。
ママに、ちゃんとお料理習おうかな……カイの一人暮らしに間に合うように。
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