0人が本棚に入れています
本棚に追加
「…おい、絶対に一部始終見てたろ?」
そう言って彼はいつもは見せない子供のような顔で笑った。
そして、ふわりと風を運んで私の目の前に着地した。
私との距離は50メートル程はあった。それを一瞬で…
「千陰に怒られるんじゃねぇの?」
そう言いながら、私の腕を掴んで立ち上がらせる。
私の知っている宇月千陰くんではない…気がする。
でも、さっきまで一緒にいたのは宇月くん…
「おーい。大丈夫か?怪我とかしてないか?」
えっ…
というか…
今まで宇月くんだと思っていた人って…
だめよ!今までの宇月くんが好きだったからって、今の宇月くんを嫌いになっちゃ!こっちの宇月くんが本物なんだわ!
「おい!変なこと考えてんだろ?」
「いてっ!」
頭を叩かれた…
痛い。
とっさに距離をとる。
「あなた、誰よ!痛いよ!」
きつく睨み付けたつもりが笑われた。
「そんな顔で怒ったって怖くねぇよ!さっ!帰るぞ!」
そう言って頭をなでる彼。
やっぱり別人だ。
最初のコメントを投稿しよう!