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帰ろうとして、送ると言った彼はやっぱり別人のようだった。
そもそも、私の知っている宇月千陰という人は送るなんて言わない。
「あの…どなたなんですか?」
「千陰だろ」
外は日が落ちはじめている。
そんな中長い沈黙が続く。
「華都ちゃんさぁ、これ」
彼はふと、振り向いて私に小さな紙を渡してきた。
「…何ですか?これ…」
「もし、これから生きていく上で今日のことが夢にたくさん出てくるとか、調子が悪くなったりしたらそこに電話して相談すんの」
今日のこと…
「宇月くんが雑技団を目指しているってこと?」
「はぁ?」
「大丈夫だよ!みんなには黙っとく!これも事務所の名刺でしょ!あんな凄いの見て、トラウマにならないよ!頑張ってね!」
彼の顔には呆れているような、あわれむような…
そんな表情が貼り付いていた。
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