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「三上さん?僕があの人の気を引き付けるからその間に逃げてくれる?」
「えっ!?駄目だよ!宇月くんだけ置いてきぼりにできない!怒られるなら、一緒に怒られよう?」
半分泣きそうな顔をしながら真剣に僕に訴える彼女。
いい人過ぎる。
一目散に逃げればいいものを…
「じゃあ、ここにいて目を閉じてて?良いって言うまで絶対に目を開けちゃダメだよ?」
素直にうなずく彼女が目を閉じるのと、怪しい男が動き出すのはほぼ同時だった。
僕は動きを感じとり、自分の陰に手を当てて言葉を紡いだ。
「壁(ヘキ)!」
そして、大きな衝撃音が倉庫に響く。
「…う、宇月くん!?」
「大丈夫。絶対に目を開けないで」
彼女の耳元でそう言って、防御した相手の方を振り返る。
依然フラフラとしたままだったが、しっかりと僕を見ているようだった。
「黒影…三上さんを守りながらだと、少し大変だ…後は頼む」
【いいのか?】
「終わったら早めに返してくれ」
僕は自分の意識を沈めていった。
僕の奥深くへ…。
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