第1章 つながる

8/24
前へ
/70ページ
次へ
「三上さん?僕があの人の気を引き付けるからその間に逃げてくれる?」 「えっ!?駄目だよ!宇月くんだけ置いてきぼりにできない!怒られるなら、一緒に怒られよう?」 半分泣きそうな顔をしながら真剣に僕に訴える彼女。 いい人過ぎる。 一目散に逃げればいいものを… 「じゃあ、ここにいて目を閉じてて?良いって言うまで絶対に目を開けちゃダメだよ?」 素直にうなずく彼女が目を閉じるのと、怪しい男が動き出すのはほぼ同時だった。 僕は動きを感じとり、自分の陰に手を当てて言葉を紡いだ。 「壁(ヘキ)!」 そして、大きな衝撃音が倉庫に響く。 「…う、宇月くん!?」 「大丈夫。絶対に目を開けないで」 彼女の耳元でそう言って、防御した相手の方を振り返る。 依然フラフラとしたままだったが、しっかりと僕を見ているようだった。 「黒影…三上さんを守りながらだと、少し大変だ…後は頼む」 【いいのか?】 「終わったら早めに返してくれ」 僕は自分の意識を沈めていった。 僕の奥深くへ…。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加