お花見デート

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「どうぞって誰が運転するんだよ。ってか、これは誰の車なんだ?」 格好いいエスコートに頬が染まってしまったのを訳の分からない行動に怒っているためだと思わせるように、突っ慳貪に言い放つ。 「僕の車で、僕が運転します」 「アンタが運転って免許持ってるのか?」 「えぇ。この車は免許取得祝いと誕生日プレゼントを兼ねて、祖父がプレゼントしてくれたんです」 「へぇ。アンタってこういう車の趣味なんだ」 俺より少しだけ早く十八歳になっているし、留年していなければ大学生になっているのだから免許を持っているのも不思議ではない。 免許に関しては納得しつつも、雅臣のイメージに似つかわしくない走り屋っぽいスポーツカーを眺める。 「僕の趣味ではないですよ。初心者ということで小さな傷を付ける可能性もあるだろうからと、祖父のコレクションからプレゼントされたんです」 「爺さんの趣味……」 苦笑して説明してくれる雅臣に、一条の屋敷の車庫の予想がついた。 乗り心地より走りを重視した車が並んでいるんだろう。 いつかは顔を合わせるんだろう一条総帥を思い浮かべて、開けられたドアから助手席に座る。 パタンとドアを閉めた雅臣が、運転席に乗り込む。 イメージとは違うと思っていたのに、シートに収まった雅臣は近未来的な車内にハマっていて、ワイルドさがアップしたようで胸がときめいてしまう。 「さぁ出発しますよ。シートベルトは締めましたか?」 「え? あぁ、今締める」 ぼうっと雅臣に見惚れていて嵌め忘れていたシートベルトを手に取るが、初めてのシチュエーションに変に焦ってしまい上手く嵌まらない。 「貸してください」 締めていたシートベルトを外した雅臣が俺に覆い被さるように身を乗り出してきて、シートベルトを嵌めてくれる。 狭い車内での密着に、緊張と興奮で息苦しいほどに早くなる鼓動。 「今から出発なんですから興奮しないでください」 シートベルトが嵌まっても離れようとしない雅臣が、溜め息混じりに呟く。 「興奮なんてしてない」 「僕はしてしまいました」 暴れ続ける心臓のせいで喉が渇き掠れた声で否定する俺に、甘ったるい声で囁きながら欲情に濡れた顔を近付けてくる雅臣。 言葉で否定しても、興奮しているのは痛いほど分かっている。 抵抗などできるはずもなく、雅臣の唇を受け入れる。
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