一章

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「ここは…どこだ……?」 俺は本を読みながら家に帰って…それから、本を読みながらご飯を食べて…風呂に入りながら本を読んで…ようやく本を読み終わって寝たはず…。なのだが。 目の前には夕陽のような暖かな光が何処までも続いている。 俺は見えない足場の上に立っているようだが意外としっかりしているようで空中に浮いているような不安感はない。 「ほえ~…綺麗だな。」 「ふむ、意外なところで感動するんだな。君はもっと無愛想な奴だと思っていたんだが…。」 声がした方向を咄嗟に向くとそこには、宙にフワフワと浮かぶ不思議な光る玉があった。 「なるほど、さしずめ精霊様といったところか?」 「いいや、ちょいと違うんだなーこれが。俺はただの管理者、この世界のね。」 おい誰かこの脳みそが腐ったバカを焼却炉に入れといて。 「いや、思考読めなくても顔で分かるから!そこで『糞が!』見たいな顔するのもやめて!」 「はいはい分かった分かった。じゃ俺本読んでるから。」 五月蝿い玉が喚いているが俺は気にせずおもむろに、ズボンの中から本を取り出した。 玉が『え、どっから出してんの?ねえ、ねえ!』と話しかけてくるのが非常にうざったい。「はぁ~…しょうがないな。《消えろ》」 本が消えた………? 消えた?本が…?俺の命とも言える本が…? 「まあいいや、もう一冊あるし。」 玉が愕然としながらさっきと同じ質問を投げかけてくる。 なんで表情が分かるかって?勘に決まってるだろ。 そこからはまさにイタチごっこだった。 玉が消えろと言うたびに俺が持っている本が消え、そこで俺はまた同じ本をズボンから取り出す。 そんなやりとりを15.6回繰り返してそこで俺の本の在庫がきれてしまった。 「ハァ…。何か用?」 「いや、用があるからさっきから訪ねてるんだけど…まあいいや。話が続かないから。」 ハァ、と溜息をつく玉。 なに諦めムードになって嘆いてるんだか、俺なんて今日買ったばかりの本を16冊も消されたんだぞ。 全く溜息をつきたいのはこっちだよ。
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