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「言ったらよかった」
ゴミを捨て、帰路に引き返していたとき、私はぽつりと呟いた。
今更になって気持ちは素直になる。
「あほやなぁ」
隣から聞こえた呆れ声に、深く頷く。
「ほんま、あほや」
だめだ、泣いてしまう。あほな上に落ち込みやすいときた。
私はこの言葉を何週間言えずにいるんだろう。
一回、たった一回だけだが、あの人に言えたことなのに。
雨の日、真っすぐ帰る気にもなれず駅前で友人と話している時、
練習でびしょぬれになったのであろう彼と、男友達の姿が見えた。
そのときも、彼の姿が目に飛び込んできた瞬間、
私の心臓はうるさく騒ぎ始めた。
「おい」
男友達がおもむろに私に近づいてきた。
彼は少し離れたところで立ち止まっていた。
「あいつにばいばいって言いや」
「え?ちょっと……」
言いかけた私を見事にスルーして、そいつは立ち去った。
当然、彼もその後をついて行く。
その後ろ姿を見た瞬間、鼻の奥がツンとした。
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