恋の病は・・・Second Season~冬~

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先生の背中が人混みに紛れて行く。 隣りに佐伯さんを連れ、私の知らない、踏み入れられない大人の世界に消えて行く。 「……イヤだ。行っちゃイヤだっ!」 「琴音っ!?」 私は恭子の腕を振り払い、彼が消えた人混みへと駆け出した。 彼の背中が涙で霞んで見える。 「待って!先生っ!」 私の声に気づいた彼は、目を皿のようにして振り返った。その隣りには佐伯さん。そして、二人が来るのを待っていたのか、数名の病院スタッフの姿もある。 「先生……私、また飲みすぎちゃったみたいで……お腹が痛いんです。苦しくて…このままだと、また吐血しちゃうかも知れません!」 目に涙を溜めながら言い放つ。 街中で堂々と吐血予告をする私。 馬鹿な事をしているのは自分でも痛いほど分かってる。頭では最低だって分かっているけど、感情のコントロールが利かない。 当然、佐伯さんを含め周囲は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。 私の頬に一粒の涙が伝う。 「…胃十二指腸潰瘍の再燃でしょうか。ここで吐血はマズイですね。直ぐに救急外来を受診しないと」 彼は私の瞳を見つめ、主治医用の丁寧な口調で私に言った。 「先生……」 「このまま稲森さんを救外に連れて行く。悪いけど俺は二次会パスするわ。後は宜しく、幹事さん」 彼は掴まれた佐伯さんの手を引き剥がすと、口端をくっと上げて綺麗に笑った。
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